米IBM Corp.がパソコン事業部を売却——2004年12月,1つのニュースが世界のパソコン業界を揺るがした。パソコンの生みの親自らが,事業から手を引くという。売却先の企業も業界関係者を驚かせた。中国のパソコン・メーカー,Lenovo Group Ltd.に売り渡すというのだ。

 このニュースは,パソコン市場の大きな転機を象徴している。既に飽和状態にある米国や日本などの市場に代わり,中国をはじめとした新たな市場が台頭しつつある。IBM社が中国企業に事業を託したように,今後はこの市場の要求を理解できる企業が存在感を増しそうだ。

 中国を含むいわゆる「BRICs(Brazil, Russia,India and China)」,さらには中近東やアフリカ,アジアなどの発展途上国の市場が急速に開けつつある。欧米企業は,これらの諸国を「新興市場(emerging markets)」と位置付け,積極的に開拓する方針を打ち出した。IBM社が他社に任せたのと異なり,自ら市場に打って出る企業が少なくない。2004年に入って,パソコンや携帯電話機などを手掛ける大手エレクトロニクス企業が,相次いで市場開拓に取り組み始めている。