「究極の光メモリ」といわれ,これまで何十年もの間,研究開発が進められてきたにもかかわらず,いまだに実用化されていないホログラフィック記録再生技術。しかし,ここにきてBlu-ray DiscやHD DVDなど次世代光ディスクの次を担う光ディスク技術として注目を集めている。火付け役の一社がオプトウエアである。同社の提案する「コリニア・ホログラフィ方式」は1つの対物レンズを使って記録再生が可能で,光軸の異なる従来の「二光束干渉法」よりも光学系を簡素化できる。記録位置を調整するサーボ技術もCDやDVDの技術を流用可能である。2006年前半にまず業務用途での製品化を狙う同社は,必要な各種のマージンの確保にメドを付けた。これらのデータを交じえながら,ホログラフィック技術の実用化までの距離感と,残る課題を同社の技術者に語ってもらう。 (新井 将之=本誌)

 オプトウエアは,独自に開発したホログラフィック記録再生技術「コリニア・ホログラフィ方式」(以下,コリニア方式)を使う記録再生装置,および同方式で使う光ディスク媒体「HVD(holographic versatile disc)」の実用化にメドを付けた。2006年前半に,まず業務用途に向けた製品を投入する。

 ディスクの直径は現行のCDやDVDと同じ12cm。このディスクの片面単層に200Gバイトのデータを格納できる。これは,例えば2003年に製品化が始まった次世代光ディスク規格の1つである「Blu-ray Disc」の片面単層媒体(25Gバイト)の8倍に当たる。ディスク回転速度は約300rpmと1倍速のCD並みに低速ながら,データ転送速度はDVDを約1万rpmで回転させた場合に匹敵する160Mビット/秒以上と高い。将来的に記録容量は数Tバイト,データ転送速度は数Gビット/秒も可能である。

 我々がまず狙うのは,企業のデータ・バックアップなどに使われる大容量テープ媒体の置き換えだ。競合できる価格として記録再生装置は250万円程度,媒体は1万円程度を目指している。記録再生装置は,いわゆる19インチ・ラック型を計画しており,光学系やディスク回転系を収めた部分はA4判サイズ(297mm×210mm)程度まで小型化すべく,開発を進めている。記録媒体はフォトポリマを記録材料に使う追記型で,外光を遮断するカートリッジに格納する。記録が完了すれば,原理的にはカートリッジから取り出すことも可能である。

 既にコリニア方式に基づく記録再生装置を試作し,実際にディスク媒体を回転させながらデータを記録再生するデモを見せている。映画のデジタル・データを,ホログラムを記録する際の最小単位である「ページ」に分割し,ディスクの任意のトラックおよびセクタに1ページずつ記録していき,続いて記録済みのページを読み出して再生するというものだ。

 製品化を約1年後に控え,光学系の構成や媒体構造は最終形態に近いところまで到達した。製品化に必要不可欠な各種システム・マージンもひと通りそろえた。以下で,製品化を支える技術と実験データを紹介する。