キヤノン 山本 碩 氏 コアテクノロジー開発本部 本部長 常務取締役 |
——SEDは製造技術にノウハウが凝縮していると聞きます。製造装置は内製するため,他社はそう簡単にまねできません。
研究開発ではパネルの性能を引き出すための製造技術,いわゆるモノづくりを徹底的に突き詰めました。そして,その知見を盛り込んだ製造装置を内製するのです。SEDの市場を拡大するために,仲間づくりを始めるかもしれない。しかしパネルの製造装置については,絶対に内製を維持する。そこが付加価値の源泉なのですから。
SEDをいわゆる「スマイル・カーブ」に陥らせないためには,自前で製造するという姿勢を強く維持し続けなければならない。自動車メーカーは,そうした姿勢を徹底させている。だからこそ世界で通用する実力を身に付けているのでしょう。当たり前の話かもしれません。しかしその当たり前のことを実行するのが,本当に難しい。
国内のエレクトロニクス・メーカーもかつては,モノづくりの技術を自社で抱えていました。しかしある時期からEMS(electronics manufacturing service)を活用して,水平分業を推し進めた。モノづくりではなく,設計などより上流の領域で付加価値を生み出そうとする判断があったのでしょう。得意分野で勝負しようとしたのです。その結果,コモディティー化が進み,製品の特徴を打ち出せなくなってしまっている。本当の付加価値は,回路設計や実装技術,材料技術といったあらゆる技術を集積化することで生まれるはずなのに。
2005年の研究開発テーマ