キヤノン

山本 碩 氏
コアテクノロジー開発本部 本部長 常務取締役

——SEDは製造技術にノウハウが凝縮していると聞きます。製造装置は内製するため,他社はそう簡単にまねできません。
 研究開発ではパネルの性能を引き出すための製造技術,いわゆるモノづくりを徹底的に突き詰めました。そして,その知見を盛り込んだ製造装置を内製するのです。SEDの市場を拡大するために,仲間づくりを始めるかもしれない。しかしパネルの製造装置については,絶対に内製を維持する。そこが付加価値の源泉なのですから。

 SEDをいわゆる「スマイル・カーブ」に陥らせないためには,自前で製造するという姿勢を強く維持し続けなければならない。自動車メーカーは,そうした姿勢を徹底させている。だからこそ世界で通用する実力を身に付けているのでしょう。当たり前の話かもしれません。しかしその当たり前のことを実行するのが,本当に難しい。

 国内のエレクトロニクス・メーカーもかつては,モノづくりの技術を自社で抱えていました。しかしある時期からEMS(electronics manufacturing service)を活用して,水平分業を推し進めた。モノづくりではなく,設計などより上流の領域で付加価値を生み出そうとする判断があったのでしょう。得意分野で勝負しようとしたのです。その結果,コモディティー化が進み,製品の特徴を打ち出せなくなってしまっている。本当の付加価値は,回路設計や実装技術,材料技術といったあらゆる技術を集積化することで生まれるはずなのに。

2004年の研究開発成果
  • 820万画素のCMOS型固体撮像素子を搭載したプロ用デジタル一眼レフ・カメラ「EOS—1D MarkII」
  • 銀塩写真並みの高画質と高耐候性の印刷が可能なフォト・プリンター「SELPHY」(昇華型熱転写方式およびインクジェット方式)
  • デザイン性と印刷性能などを追求したインクジェット・プリンター「PIXUS」
  • Java実行環境により機能を追加できるカラー・デジタル複合機「iR C3220/C2620シリーズ」
  • 1870mm×2200mm基板を使う第7世代のTFT液晶パネル生産ライン対応の露光装置「MPA−8500/8500CF」
    2005年の研究開発テーマ
  • 大画面フラット・パネル・ディスプレイ(SED関連技術)
  • 次世代撮像モジュール(撮像素子および光学系)
  • 次世代映像エンジン(ネットワークとデジタル画像対応の記録技術)
  • 高速インクジェット記録技術(写真画質で高速印刷する技術)
  • 次世代リソグラフィ技術(液浸露光,電子ビーム(EB),極紫外光(EUV)を使う半導体露光技術)