自動車のエレクトロニクス装備の開発体制が大きな変化点を迎えている。電子化の流れが加速したことで,これまでのような装備ごとの個別開発ではなく,システム全体を統合した開発が不可欠になった。トヨタ自動車でこうした移行を推進する担当者が,その取り組みを解説する。

林 和彦
トヨタ自動車 車両技術本部 第2電子技術部 部長

 「認知」「判断」「操作」という3要素に分類できるクルマの運転行動の中で,これまで長い間注目されてきたのは,運転の「操作」を補助する制御技術だった。最近は「判断」を補助する技術も開発が進んでおり,今後はさらにその前の段階である「認知」を補助する技術がキー・テクノロジーになると考える。特に,運転者に危険を気付かせるための視覚支援技術が重要になりそうだ。
 交差点や道路環境などにおける,運転者には見えない危険を気付かせる技術も重視している。クルマとクルマ,クルマと道路,クルマと人の通信技術を活用して運転を支援することになる。こうした通信技術の活用により,道路などの交通システムが高度になる可能性が高まる。我々は行政に対して環境の整備を働き掛けるとともに,車両と道路が相互に協調するシステムを開発していこうと取り組んでいる。クルマと交通システムがそれぞれ高度化することにより,互いの効果が高まる。こうした好循環を実現することによって,交通事故や交通渋滞,環境負荷をゼロにする「Zero-nize」と,楽しさやワクワク感,心地よさを最大化する「Maxi-mize」を高い次元で両立するのがトヨタ自動車の目指す姿である。