2013年9月14日14時、新開発の小型固体燃料ロケット「イプシロンロケット」試験機が、閃光と轟音とともについに打ち上げられた(図1)。同試験機は、発射台のある宇宙航空研究開発機構(JAXA)内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県・肝付町)からまず垂直方向に飛び出し、その後、東南東(北を0 °とした場合の112 °の方向)へと機体を傾けながら空の彼方へと消えていった。

 それから約1時間後には、搭載する惑星分光観測衛星「SPRINT-A」(愛称「ひさき」)を無事分離。ほぼ予定通り地球周回楕円軌道〔近地点946.8km(計画値950km)、遠地点1156.8km(同1150km)〕への投入を果たした。2度にわたる打ち上げ延期を経ての挽回劇だった。

古くさいシステムから卒業

 イプシロンロケットは、日本が12年振りに開発した新型ロケットだ*1。液体燃料ロケットの「H-IIA」「H-IIB」と並ぶ日本の基幹ロケットと位置付けられ、日本が目指す宇宙利用と宇宙ビジネスの拡大に大きく貢献するものと期待されている。


〔以下、日経ものづくり2013年10月号に掲載〕

図1●閃光と轟音とともに打ち上がる新開発の小型固体燃料ロケット「イプシロンロケット」試験機
図1●閃光と轟音とともに打ち上がる新開発の小型固体燃料ロケット「イプシロンロケット」試験機

*1 全長24.4m、直径2.6m、質量(ペイロード含まず)91t。打ち上げ能力〔地球周回低軌道(高度500km)に衛星を投入する場合〕は1200kgとされる。1世代前の日本の固体燃料ロケット「M-Vロケット」(5号機)の場合は、全長が30.8m、直径が2.5m、質量が140.4t、打ち上げ能力(同)が1850kgだった。