スズキは、軽トラック「キャリイ」を全面改良した(図1)。これまでショートホイールベース仕様(SWB)とロングホイールベース仕様(LWB)の二つがあったものをSWBに統一した。前の車軸の位置が違い、SWBは前席の真下に、LWBは前席より前にある。

 1999年1月に発売した先代キャリイはLWBだけで生産を始めた(図2)。当時、衝突安全基準が新しくなり、乗員より前に前輪のホイールハウスなどの構造物があるLWBの方が衝突安全性を確保するうえで有利だと考えたからだ。確かにその通りなのだが、その後、SWBでも基準を満たせることが明らかになり、他社では次第に小回りの利くSWBが主流になった。

 2005年11月、スズキは他社を追ってSWBを追加発売した。商品ラインアップとして、業界で主流のSWBを揃えることが要求されたからだ。このとき、LWBに最小限の変更を加えた“派生車”としてSWBを仕立てた。このため、初めからSWBを設計する場合に比べ、どうしても妥協が必要だった。

以下、『日経Automotive Technology』2013年11月号に掲載
図1 全面改良した「キャリイ」
図1 全面改良した「キャリイ」
三菱自動車に「ミニキャブ トラック」、日産自動車に「NT100クリッパー」、マツダに「スクラムトラック」として、それぞれOEM供給する。
図2 先代のロングホイールベース車
図2 先代のロングホイールベース車
写真は部分改良前。