Part2:急成長の要因

8年間で販売台数は2倍以上に
デザイン、性能、品質が向上

Hyundai Kiaグループは2000年代前半に世界シェアトップ5入りを目指す計画を立案。2010年に年間生産台数は500万台を超え、目標を達成した。成功のポイントは、デザイン、性能の向上に加えて新興国攻略の早さだ。顧客に訴える“見た目の品質”を高め、市場に合わせた小型車を大幅に増やした。日系メーカーも小型車の車種展開や迅速な開発体制を学ぶ必要がある。(京都大学 経済学部教授 塩地 洋)

 Hyundai Kiaグループは2000年代前半に「グローバルトップ5」戦略を立案し、年間生産台数500万台を達成することで世界の自動車メーカートップ5に入ることを目指した。2010年に生産台数が500万台を超え5位を達成し、2012年の世界販売台数でも約712万台とその座を維持している。2004年の生産台数346万台と比較すると、現在は2倍以上の規模。同じ時期にこれだけ著しい成長を見せた自動車メーカーは同グループ以外にない(図1)。

 この成長を支えたのが、海外での生産および販売の増加である。2004年当時、同グループの海外生産は70万台、海外販売は259万台であった。これが2012年の販売台数で見ると、韓国内が116万台で残りの604万台が海外、さらに生産台数も364万台が海外になった。

 同グループのクルマはなぜ売れているのか。この問いに対し、日産自動車COO(最高執行責任者)の志賀俊之氏は次のように述べている。「デザインや性能、品質の面で競争力が上がった」「工場のグローバル展開やマーケティングのスピードが速い」。

 躍進の理由について、筆者は三つのポイントがあると考える。一つは、「新興国のボリュームゾーンである低価格帯(主としてBセグメント)に車種が多い」こと、次に「性能と品質の向上」、最後に、「バリューフォーマネー戦略の徹底(コストを抑えて日本車に比べて価格を低くし、品質はほぼ同じとする)」である。

Bセグメントに15車種

 最初のポイントを中国市場で説明しよう。Hyundai Kiaグループは、中国市場におけるBセグメント(1.0~1.6L)の車種が極めて多い。Hyundai Motor社では小型セダン「Elantra」に、最新型の「Elantra Longdong」、先代の「Elantra Yuedong」、先々代がベースの「2011年タイプElantra」、の3車種を用意。さらに、一回り小さい「Accenet(旧型)」「Verna 」「同ハッチバック」や「i30」を加えると7車種になる。加えてKia社はセダンが「K3」「K2」「Forte」「Cerato」「Rio」の5車種、ほかに「K2ハッチバック」「Ceratoハッチバック」「Soul」をそろえる。両ブランドの合計は15車種に上る(図2)。

 一方、トヨタ自動車は「Yaris(日本名ヴィッツ)」「Vios」「カローラ」「カローラEX」「EZ」の5車種だけ。やや古いデータだが、2010年はHyundai KiaグループがBセグメントで8モデル74万台を販売したのに対し、トヨタはカローラが14万台、Viosが5万台、Yarisが3万台で合計22万台にとどまった。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 2012年のメーカー別販売台数
Hyundai Kiaグループの2012年世界販売台数は712万台で世界第5位。2004年には世界生産台数で第7位だったが、急成長している。〔出典:2012年の販売台数は各社の発表値、2004年の生産台数はCSM WorldWide(現IHS Automotive)〕
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図2 中国市場のBセグメント車
図2 中国市場のBセグメント車
(a)Hyundai社の「Verna」(左)。Cセグメントの「Elantra」より一回り小さく、排気量1.4Lのエンジンを搭載。ベースとなった新型「Accent」(右)からフロントフェースを変更している。(b)Kia社「Soul」。写真は2013年2月に米国で公開した新型。