2011年のインフルエンザの流行を機に、首からぶら下げて使う携帯用除菌剤の普及が一気に進んだ。2013年1月下旬~2月初旬にかけて、そのうちの1製品が原因と見られる化学やけどの事故が頻発。全治1カ月以上の事故も含まれていたため消費者庁は2月18日、当該製品の使用中止を呼び掛けた。しかし、その後も同様の事故が相次ぎ、3月28日までに101件の報告が同庁に寄せられた。

 一連の事故を起こしたとされるのは、化粧品や医療機器などの輸入販売/OEM(相手先ブランドによる生産)を手掛けるERA Japan(本社愛知県小牧市)が2013年1月半ばに発売した「ウイルスプロテクター」だ(図1)。消費者庁に最初の事故の報告があったのは、2013年2月2日。千葉県在住の女性がウイルスプロテクターを首から下げた状態で幼児を抱いていたところ、その幼児が胸部に全治1カ月以上の接触皮膚炎(化学やけど)を負った。

 その後もウイルスプロテクターによる化学やけどの事故が相次いだため、ERA Japanは自主回収と製品交換に乗り出した(図2)。しかし、3月下旬になっても販売済みの約73万個のうち約25%しか回収できなかった。その理由について同社は「交換品の入手に手間取った」としている。

〔以下,日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

図1●重大事故を起こした除菌剤「ウイルスプロテクター」
図1●重大事故を起こした除菌剤「ウイルスプロテクター」
パッケージには大きく「塩素成分で空間除菌!」と表示されている。しかし、塩素ガスで空気を除菌する製品は「前例がほとんどない」と業界関係者は言う。 写真:消費者庁
図2●消費者庁に報告された事故の2事例
図2●消費者庁に報告された事故の2事例
左の写真は、3歳幼児の被害事例。母親がウイルスプロテクターを子供の首にかけて使用したところ、胸部に化学やけどを負った。右は10歳男児の例。同製品をポケットに入れていた。その結果、大腿部に化学やけどを負った。 写真:消費者庁