接合部の強度を母材よりも高めることも可能
摩擦撹拌接合法(FSW:FrictionStir Welding)は、先端にプローブ(突起)の付いた円筒状のツール(工具)を利用して金属を接合する技術である〔図1(a)〕。例えば2 枚の板材を接合する場合は、まず板材同士を突き合わせ、拘束治具で固定した上でツールを高速で回転させながら、板材に押し付けて継手部(接合部)に沿って移動させていく〔図1(b)〕。
固体状態のままで接合
ツールは径の大きいショルダ部と、その先端にあるねじを切ったプローブ部から成る。接合プロセスでは、ツールの回転によって摩擦熱を発生させ、その熱で継手部を塑性流動(固体でありながら液体のようにふるまう)状態にして、プローブ部をそこに挿入して撹拌する。その後、撹拌した部分が再結晶化することで強固な接合が実現できる1~4)。同法は、継手部の強度低下がこれまでの溶融溶接に比べて小さく、条件によっては接合部の機械的強度を母材以上に高められる。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕
参考文献:1)W.M.Thomas,E.D.Nicholas,J.C.Needhan,M.G.Murch,P.Temple-Smith,C.J.Dawes,PCT/GB92/02203,December6,1991.
参考文献:2)溶接学会編,『摩擦撹拌接合─FSWのすべて』,産報出版,2006.
参考文献:3)R.Nandan,T.DebRoy,H.K.D.H.Bhadeshia,Prog.Mater.Sci.,53(2008)980.
参考文献:4)R.S.Mishra and Z.Y.Ma,Mater Sci Eng R50(2005)1.
大阪大学接合科学研究所 教授