原料までさかのぼって新たなポリマ構造を導入した液晶ポリマが近く登場する。ポリプラスチックス(本社東京)が市場投入を始める「ラペロス」だ。

 液晶ポリマは優れた耐熱性と流動性が特徴のエンジニアリング・プラスチック。溶融時にはその名の通り、棒状のポリマ鎖が並んだ液晶状態になる。ポリマ鎖が剛直で絡まりにくいために溶融粘度が低くなり、「射出成形用途で使う熱可塑性樹脂として最高の流動性を備えている」(同社事業戦略統括室LCP事業戦略室室長の和田光雄氏)。

 新型液晶ポリマは、流動性をさらに高め、併せて従来型を上回る寸法精度(特に低反り性)を実現した。同社が従来型液晶ポリマ「ベクトラ」を発売したのは1985年。新しいポリマ構造という点では、実に28年ぶりの新製品である。

部品の小型/高密度化に対応

 「流れやすいラペロスを使えば、今まで以上に薄くて複雑な形状の小型部品を造れる。特にコネクタ類で大きな効果が期待できる」(和田氏)。電子機器、特に携帯機器の小型/高性能化によって、コネクタは多ピン化が進み、従来の液晶ポリマでの対応には限界が見えてきたという。例えば、CPUソケットでは、ピン数が3000に迫る製品も出てきている。多ピン化に対応するためには、電極間のピッチはより狭く、ピンの挿入部を隔てる壁の厚さはより薄くしなければならない。

 図1は、新製品のラペロスと従来品のベクトラの流動性を、成形条件を変えて比較したものだ。成形サンプルとして、ピン間部分の壁厚が0.12mmで1248ピンのCPUソケットを用いた。ベクトラだと全ての成形条件で未充填の部分が残ってしまう。一方、ラペロスは、射出速度100mm/秒、射出圧140MPaの成形条件では未充填部分が残るが、射出圧を維持したままで射出速度を150mm/秒以上に高めるときれいに充填できる。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

図1●ラペロスとベクトラの流動性の比較
図1●ラペロスとベクトラの流動性の比較
中央の正方形の部分を除いて白く見えるのが未充填部。使用したのは標準グレードで、ラぺロスはGA130、ベクトラはE130i。いずれも30質量%のガラス繊維で強化している。