2013年2~6月号では、2012年10月に日本プラントメンテナンス協会が主催した「からくり改善くふう展2012」の展示品から、生産現場で発生するさまざまな問題を解決するために、現場の人たちが知恵を絞って考案・作製したからくりや治具の事例を紹介します。

事例1:シーソーでピッタリ3本のねじを供給する

 高価なパーツフィーダを使わずに、わずか2万8000円の材料費で宮川化成工業広島事業部(広島県東広島市)が製作したのが、部品供給用からくり「ビスGET」だ(図1)。クルマの樹脂製Dピラーにスピーカを取り付けるために必要な3本の座金付きねじ(以下、ねじ)を、作業員にその都度供給できる

 主な構成要素は、箱、モータ、円板、スライダ、シーソーだ。構造と動きが分かりやすいように、正面と側面から見たのが図2(a)である。

 円板は、直径210×厚さ2mmの大円板と、直径140×厚さ2mmの小円板の2枚ある。このうち、大円板には外周近くに合計2個の直径2mmのネオジム系磁石(以下、磁石)が、小円板には切り欠きが付いている。2枚の円板は時計回りに120rpmで回転する。すると、小円板の切り欠きが乱雑に積まれたねじを適度にかき回し、ねじの近くに来た磁石により大円板が1本のねじを吸着して回転を続ける〔図2(b)、(c)〕。磁力の大きさを調整したことから、ねじが一度に2本以上付くことはない。
〔以下、日経ものづくり2013年4月号に掲載〕

図1●部品供給用からくり「ビスGET」
図1●部品供給用からくり「ビスGET」
箱の中に乱雑に積まれたねじを、1度に3本ずつ作業員に供給する機能を備える。ねじはM6で、ねじの長さは15mm、座金の直径は9.5mm。
図2●部品供給用からくりの構造と動き
(a)ねじを投入する箱の中にある機構部(円板とスライダ、シーソー)の正面図と側面図を示した。(b)大円板に付いた磁石が6時の位置付近に来たときに、ねじを1本吸着する。(c)そのまま回り続け、(d)12時の位置に来るとスライダの壁にぶつかって、ねじは磁石から切り離される。(e)切り離されたねじは、スライダのV字形の溝を滑り落ちていく。(f)スライダから落ちたねじは、上に口を開いた「コ」の字形のシーソーに頭を載せる。(g)右端底部に組み込まれた重りにより、ねじが2本載っても依然、シーソーは水平を保つ。ところが、(h)ねじが3本載ると、それらの合計質量が重りのそれを上回り、シーソーは左側に傾く。結果、3本のねじはシーソーから落下し、作業員の手に渡る。
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*:箱に投入されたねじを作業員が手で直接取ろうとすると、取りにくいために時間がかかる。加えて、多く取りすぎると戻す時間が、少ないと再度取りにいく時間が無駄にかかる。