2013年2月8日、長崎県長崎市のグループホームで5人が死亡する火災事故が発生した。
事故原因に関する警察の捜査が進む中、TDKは同年2月22日、同社が製造・販売した加湿器が火元となった可能性が極めて高いことが判明したと発表。
この加湿器は約13年前にリコールを届け出、回収を進めていた製品だった。
長崎市の火災事故の原因とされた加湿器は、TDKが1998年9月から1999年1月まで販売していた「KS-500H」だ。蒸発皿に固定されているヒーターの取り付けが不十分だったため、周辺の樹脂に接触して発煙・発火の恐れがあるとして、同社は1999年1月25日に類似機種の「KS-300W」を含めて通商産業省(現経済産業省)にリコールを届け出ると同時に製造・販売を中止し、製品の回収に踏み切った。
ところが、この機種の事故は続いた。1999年1月から2011年12月の間に46件の発煙・発火事故が発生。さらに、2013年2月には、5人の人命を失う事態に陥った今回の長崎市の火災事故が発生してしまう。
この事故を受けて同社は、新聞やテレビCM、Webサイトなどを使って回収の周知を強化した(図1)。同社によると、2013年3月10日時点で、両機種合計で販売台数の約3割に相当する1万5093台が未回収という状況である(表1)
〔以下,日経ものづくり2013年4月号に掲載〕