自動変速機(AT)は多段化が著しい。トヨタ自動車とドイツZF社による8速ATの実用化にとどまらず、2013年にはZF社から前部エンジン・前輪駆動(FF)車用の横置き9速ATが登場する。9速ATは変速比幅を拡大させながら、6速ATよりも軽くできたという。ZF社に最新ATの特徴を聞いた。

 同社のATの歴史は3速ATを実用化した1960年代にさかのぼる。その後4速AT「4HP」を経て、1991年には5速AT「5HP」、1999年にはドイツBMW社向けに6速AT「6HP」を実用化した(図1)。多段化の効果は、高速走行時のエンジン回転数が下がって燃費が良くなること、各段のギア比が近づくので加速性能が向上することの二つだ。

 後輪駆動車用の6HPは第1世代で従来の5HPよりも燃料消費量を5 %削減し、第2世代ではさらに3%減らした(図2)。変速時のクラッチ制御も改善し、より速くスムーズに変速できるようにしたことも第2世代のポイントだ。

以下、『日経Automotive Technology』2013年5月号に掲載
図1 ZF社の変速機の歴史
図1 ZF社の変速機の歴史
自動変速機だけでなく、CVT(無段変速機)やDCT(Dual Clutch Transmission)も開発、検討。
図2 後輪駆動車用ATの進化
図2 後輪駆動車用ATの進化
6速ATの「6HP第2世代」に比べ8速ATの「8HP」では燃料消費量が6%減り、油圧アキュムレータを備えるタイプではさらに5%減る。