雑誌 特集

太陽電池、フロンティアを目指せ

水上、農地、自動車へ

河合 基伸=日経エレクトロニクス
2013/02/01 09:00
 

第1部<総論>
新分野の開拓で
技術開発の競争軸が変化

さまざまな分野で、太陽電池に対する期待が高まってきた。モジュールの価格低下に加えて、規制の強化や緩和などが太陽電池の利用を後押しする。太陽電池メーカーも、事業環境を好転させるために、新分野の開拓に力を注ぎ始めた。

たくさんの機械が人と共生し始める

 「船舶に太陽電池を250kW載せたい」(海運会社)、「農業を続けていくため、太陽電池による売電収入に期待している」(農家)、「購入者の3割が太陽電池を搭載していく」(キャンピングカー・メーカー)──。

 太陽電池の用途として、住宅の屋根上とメガソーラーが活況を呈する中で、「水上」や「農地」、「ビル」、「自動車」などの他分野でも太陽電池への注目度が高まってきた。規制の強化や緩和によって太陽電池をすぐにでも使いたいという状況が表面化してきたのだ。

 一方、太陽電池メーカー側も、住宅屋根用とメガソーラー用の太陽電池事業で収益が急速に悪化した結果、利益率の高い新たな用途を開拓する必要に迫られている。

 住宅屋根用やメガソーラー用の市場規模は確かに巨大になったが、太陽電池モジュールはほぼ標準品であり、技術的な差異化が難しい。太陽電池メーカーは、こうした市場規模が大きいものの、参入障壁が低い従来の用途に依存していては事業が立ち行かない。

 そのため、市場規模は小さいが参入障壁が高い市場を目指すことを決断した。「技術障壁を作って、この製品しか選択できないという状況を作り出すのが理想」(パナソニックグループ エナジー社 副社長 ソーラービジネスユニット長の吉田和弘氏)だ。

 こうした他分野での需要の急増と太陽電池メーカーの事業戦略の転換によって技術開発も多様化せざるを得ない状況だ。「2012年度から新用途を本格的に考え始めた。住宅の屋根向け頼みから脱却するために、ユーザーに歩み寄って新たな用途を開拓する」(パナソニックグループ エナジー社 ソーラービジネスユニット 技術グループ グループマネージャーの岡本真吾氏)とする。

 これまで住宅屋根やメガソーラー向けに、生産コストと変換効率を中心に追求してきた従来の技術開発だけでは到底足りない。今後は、各用途の要求に合わせた技術開発が始まりそうだ。

『日経エレクトロニクス』2013年2月4日号より一部掲載

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第2部<技術開発>
軽い、伸びる、暗所に強い
多彩な特性で勝負する

太陽電池の技術開発が、多様化し始めた。新規参入メーカーは、従来の太陽電池メーカーとは異なる発想の技術を持ち込む。軽いモジュールや繊維として服に利用できる太陽電池などが登場している。

太陽電池と周辺技術の開発が活性化

 「既存の結晶Si型太陽電池と勝負するつもりはない。変換効率や発電コストでは競わない」(三菱化学 情報電子本部 執行役員 OPV事業推進室長の星島時太郎氏)──。新規参入メーカーが、既存の太陽電池と異なる特性を武器に、新たな分野の開拓を積極的に進め始めた。これにより、太陽電池の技術開発が多様化している。

 技術開発の多様化を牽引するのは、新規参入メーカーだけではない。結晶Si型太陽電池の陰に隠れて日が当たらなかった特徴的な技術が、開発資金を得て再び開発を加速し始めている。さらに、別の分野の技術者が、求める太陽電池が世の中に存在しないとして、自ら太陽電池の開発に乗り出す例も出てきた。

 こうした多岐にわたる担い手によって、軽い、伸びる、織れる、暗所に強いなど、実に多彩な太陽電池が登場してきた。周辺技術に関しても、太陽電池の出力を最大化する技術や、影の影響を減らす技術の開発が進んでいる。以降では、従来とは異なる方向性で開発が進む太陽電池の技術動向を紹介する。

『日経エレクトロニクス』2013年2月4日号より一部掲載

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第3部<個別事例>
課題解決で用途を拡大中
具体的な設置事例が続々

太陽電池を利用した実証実験や設置事例が増えてきた。各用途での本格普及に向けた課題は、徐々に明らかになりつつある。課題解決への動きも活発になっており、太陽電池があらゆる用途に広がる日は近い。

新たな分野における太陽電池搭載の検討状況と課題

 「水上」「農地」「住宅(屋根以外)」「ビル」「自動車」の分野で太陽電池を積極的に利用する機運が高まってきた。分野によっては、既に実証実験を開始したり、具体的な設置事例が登場したりしている。本格普及に向けて、分野ごとに課題解決への取り組みが進んでいる。

 例えば、「水上」の分野では船舶をはじめ、湖などの水面に設置する際の課題解決に向けた動きが活発だ。船舶では出力変動への対応、水面への設置では陸地までの配線の耐久性向上が見えてきた。「農地」では、太陽電池の設置基準が明確になっていないことが最大の課題だ。太陽電池メーカーは、作物ごとに太陽電池の影響がないことを示すデータの蓄積に向けて動き始めている。

 「住宅」の分野では、電源工事を省きたいという需要によって電動シャッターや室内センサに向けた太陽電池の利用が始まっている。「ビル」の分野では、屋上だけでは太陽電池の設置場所が限られることから、壁面や窓に設置可能な太陽電池が登場してきた。

 ビルと同様に太陽電池の設置面積が少ないのが「自動車」の分野である。屋根の上に設置する事例は出てきたが、今後はフロント・フードやドアなどに容易に搭載できる太陽電池の開発が求められている。

『日経エレクトロニクス』2013年2月4日号より一部掲載

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