2012年9月~2013年3月号では「労働災害を防ぐ安全技術」をお届けします。最先端の動向や国際規格に基づいたグローバルに通用する安全確保について、安全のスペシャリスト集団である安全技術応用研究会が解説します。安全管理者はもちろん、機械の設計者や生産技術者も必読です。

安全確認型システムで重大災害を防ぐ

 今回も実際のリスクアセスメント(RA)事例を紹介する。アルミニウム合金など非鉄金属の製造・加工を手掛けるC社の取り組みである。同社は国内6カ所に工場を持ち、従業員数(連結)は約1万人に及ぶ。

 C社では、1990年代初めまで「ゼロ災運動」を主体とした安全管理に取り組んできた。数十年にわたる運動によって休業災害の件数は減少したものの、機械に挟まれたり巻き込まれたりするなどの重大災害がなかなか減らないことが課題だった。

 従来のC社における安全管理の考え方は、「教育を受けた社員が常に注意を払っていれば、危険な機械でも災害を防止できる」というものだった。だが、1990年代になると現場では、自動化の普及、作業や安全管理に習熟したベテラン社員の定年退職、若い社員の技能低下、非正規社員の増加などにより、むしろ労働災害のリスクが高まっていた。

 教育や社員の注意に頼る安全管理に限界を感じていたC社の技術者は、1994年に入会した安全技術応用研究会で「安全確認型システム」の存在を知る。これがC社にとっての転機となった。安全確認型システムでは、「人は間違いを犯す」「機械は故障する」の2点を前提に安全を構築する。危険側誤り(故障)を許さないシステムであり、従来とは全く異なる考え方にC社の技術者は発想の転換を迫られた。翌1995年、C社は国内の全工場で安全確認型システムを実現するために社員への基礎教育を始めた。

 一方、安全確認型システムに適した機械を実現する上で欠かせないのが、RAである。1996年からRAについて調べ、1998年に導入した。
〔以下、日経ものづくり2013年2月号に掲載〕

安全技術応用研究会
「安全は技術で構築すべき」という強い意思の下、産官学から安全技術のスペシャリストが終結し、1992年に創設された。安全技術のための基本的論理の研究、基本論理に適合した安全機器の開発、国際安全規格への働き掛けなどにより、安全機器の標準化や生産現場への普及に努めてきた。出版/研究発表/講習会を通じた情報発信も積極的に行っている。現在は、約60社の会員企業で構成されている。