安全確認型システムで重大災害を防ぐ
今回も実際のリスクアセスメント(RA)事例を紹介する。アルミニウム合金など非鉄金属の製造・加工を手掛けるC社の取り組みである。同社は国内6カ所に工場を持ち、従業員数(連結)は約1万人に及ぶ。
C社では、1990年代初めまで「ゼロ災運動」を主体とした安全管理に取り組んできた。数十年にわたる運動によって休業災害の件数は減少したものの、機械に挟まれたり巻き込まれたりするなどの重大災害がなかなか減らないことが課題だった。
従来のC社における安全管理の考え方は、「教育を受けた社員が常に注意を払っていれば、危険な機械でも災害を防止できる」というものだった。だが、1990年代になると現場では、自動化の普及、作業や安全管理に習熟したベテラン社員の定年退職、若い社員の技能低下、非正規社員の増加などにより、むしろ労働災害のリスクが高まっていた。
教育や社員の注意に頼る安全管理に限界を感じていたC社の技術者は、1994年に入会した安全技術応用研究会で「安全確認型システム」の存在を知る。これがC社にとっての転機となった。安全確認型システムでは、「人は間違いを犯す」「機械は故障する」の2点を前提に安全を構築する。危険側誤り(故障)を許さないシステムであり、従来とは全く異なる考え方にC社の技術者は発想の転換を迫られた。翌1995年、C社は国内の全工場で安全確認型システムを実現するために社員への基礎教育を始めた。
一方、安全確認型システムに適した機械を実現する上で欠かせないのが、RAである。1996年からRAについて調べ、1998年に導入した。
〔以下、日経ものづくり2013年2月号に掲載〕