欧州ジャーナリストの視点
フリーランス・ジャーナリスト Ian Adcock氏
英国在住。『What Car』『Autocar』『Motor』などの自動車専門誌の編集者を経て、1980年からフリーに。自動車技術専門誌の『European Automotive Design』誌に寄稿するなど技術にも詳しい。

 その地位についてから、まだ100日もたっていないドイツAudi社の研究開発トップのWolfgang Durheimer氏は、親しみやすい笑顔と堅い握手で、私たち報道関係者を迎えた。
 「我々の目標は、Audiを2018年から2020年の間に、世界一のプレミアムブランドにすることだ。我々はすでに、Mercedes-Benzに追い付いた。次のターゲットはBMWだ」
 この目標を達成するための基礎となるのが、今後10年間の新車攻勢である。同氏は、発売日こそ明らかにしなかったが、近い将来にAudi社から登場する新型車について、驚くほど率直に語ってくれた。
 同社の戦略において主役となる2台のクルマはすべての点で大きく異なっているが、効率とエンジニアリングにおいて、それぞれ頂点であるという点で共通している。そのうちの1台は、1Lの燃料で100km走行でき、しかもAudi車が備えるべきシート、スペース、快適性、そしてコネクティビティをすべて備えているという革新的で未来的なクルマである。
 「このクルマは自己犠牲的になる必要もなければ、神経症的なエコ戦士になる必要もなく、紛れもないAudiファミリーの4シーター車だ」と同氏は言う。
 この1Lカーは「A1」のプラットフォームをベースとして、軽量化のために先進的な素材を複合的に用いた構造を採用する予定だ。パワートレーンについて同氏は、Volkswagen社の「XL1」に使われている2気筒ディーゼルハイブリッドについて「それは我々のやり方ではない」と否定したが、それ以上のことは明らかにしなかった。(/p)

以下、『日経Automotive Technology』2013年3月号に掲載