雑誌 特集

宇宙民営化元年

大森 敏行、中島 募=日経エレクトロニクス
2013/01/07 09:00
 

地球に近いところから始まる宇宙の民営化

 「宇宙開発は国家が行うもの」。それがこれまでの常識だった。民間の宇宙利用といえば、静止衛星を利用した通信事業や放送事業といったごく狭い分野に限られていた。有人ロケットの打ち上げや地球観測衛星の運用は、基本的には国家プロジェクトとして行われてきた。

 その常識が変わりつつある。宇宙でも「官から民」への流れが加速しているのだ。背景には、東西冷戦の終結により国家が宇宙開発を行う動機が薄れたという事情がある。先進国が軒並み宇宙関連開発予算を削減するのに代わり、従来は国家が担っていた宇宙開発を民間企業が手掛けるようになってきた。

『日経エレクトロニクス』2013年1月7日号より一部掲載

<始まる宇宙民営化>
実績を上げ始めた
米国の宇宙ベンチャー

米国では数多くの宇宙ベンチャーが生まれている。その背景にあるのが、宇宙開発を民間に移転するというNASAの方針だ。宇宙ベンチャーの中から、実際にビジネスを始める企業も出始めた。

盛り上がる米国の宇宙関連ベンチャー

 宇宙開発の民営化は、主に米国を中心に起こっている。宇宙関連のベンチャー企業が、続々と登場しているのだ。その背景にあるのが、米航空宇宙局(NASA)の宇宙開発民間移転プロジェクトである。地球から近いところの宇宙開発は民間に任せ、国家の宇宙開発は火星探査などの難度の高い分野に注力しているのだ。

 NASAは、2006年に商業軌道輸送サービス(COTS:Commercial Orbital Transportation Services)という計画を発表した。国際宇宙ステーション(ISS)への輸送サービスを民間企業に委託するというもの。現在、COTSで採用された米Space Exploration Technologies(SpaceX)社と米Orbital Sciences社の2社が、NASAと商業補給サービス(CRS:Commercial Resupply Services)の契約を結び、無人宇宙船によるISSへの物資の補給を実施している。

 Orbital Sciences社は以前から宇宙関連の開発をしてきた企業だが、SpaceX社は2002年に設立されたベンチャー企業である。創業者はElon Musk氏。同氏は、インターネット決済サービス大手の米PayPal社の前身であるX.com社を1999年に創業し、現在は米Tesla Motors社の会長 兼 Product Architect 兼 CEOを務める。

 SpaceX社は、2010年12月に同社のロケット「Falcon 9」の2号機で宇宙船「Dragon」を打ち上げ、民間の宇宙船として初めて大気圏再突入に成功した。2012年5月には、Falcon 9の3号機で打ち上げたDragonがISSとのドッキングに成功している。2012年10月には、CRSに基づく1回目のISSへの物資補給を実施した。

多様な打ち上げ手段を確保

 他の宇宙ベンチャーも、事業で成功した人物が創業した例が多い。SpaceX社と並ぶ宇宙ベンチャーの雄である米Virgin Galactic社は、英Virgin Groupの会長であるRichard Branson氏が創業した。商用の宇宙旅行サービスの提供を目的とした企業で、早ければ2013年末にサービスを開始することを目指している。同社は、「LauncherOne」という空中発射ロケットを使った小型衛星打ち上げサービスも予定している。

『日経エレクトロニクス』2013年1月7日号より一部掲載

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