今月号までは、科学的なアプローチによって生産性を見える化し、その低下要因を潰していく「VPM」を解説します。2013年2月号からは、製造現場で発生するさまざまな問題を解決するために、現場の人たちが知恵を絞って考案・作製したからくりや治具を厳選して紹介していきます。

成果を大きくするための勘所

 これまで、科学的改善手法である「VPM(Value Producing Management)」の考え方や実践法などを、事例に基づいて紹介してきた。その中で随所に「価値」という言葉を使い、その価値を高めるための具体的な方法を論じた。その結果、実施する内容が、一般的な改善活動によく似ていても、生産活動に対する見方や活動の成果に大きな違いが生じることに気づかれたと思う。

 最終回となる今回は、実際にVPMを実施する上で、さまざまな場面で役立つ勘所を紹介したい。中でも特に、[1]人の生産性と物の動きの関係に注目する、[2]工程間で工数の流動性を高めて前工程に傾斜する、[3]技能伝承を重視する、[4]リーダーシップを強化して作業者のモチベーションを高める、の4つに絞って紹介する。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕

長沢 亮(ながさわ・りょう)
テクノ経営総合研究所 ものづくりセンター長
1979年に新潟大学理学部物理学科を卒業。家電・パソコンメーカー、化学メーカーで生産技術の開発や機械設備の設計、工場エンジニアリングの設計などを担当。2005年にテクノ経営総合研究所に入社し、VPMに基づいて、製造や生産管理、設計開発、営業、物流部門を対象にコンサルティング業務を手掛ける。2011年4月に同社ものづくりセンター長に、2013年4月に常務執行役員に就任して現在に至る。