良い構造は力の伝達経路が明確
「力の流れ」というのは、力を流体になぞらえた表現である。厳密には力が伝わる、あるいは荷重が伝達される、と言うべきかもしれないが、構造物の開発において、「力の流れ」や「力の伝達」といった表現はしばしば用いられる。例えば、「力の伝達を合理的にすっきりと行うことが、無駄な重量を省き、簡潔で合理的な軽量構造を得る根本となる」などと言われている。これは天才設計者であり、旧日本海軍航空技術廠しょうにおいて軍用機「彗星」あるいは「銀河」の主任設計者を務めた山名正夫博士の著書からの引用である。
力の流れ、力の伝達という表現の意味する内容は個人個人にとっては明瞭と思われるが、実は具体的な共通の定義はなされていない。筆者は、力の伝達状況を客観的に明示するために、構造物に負荷がかかったときに生じるひずみエネルギを基にした指標「U*(Ustar、ユースター)」2、3)を提案、検討してきた。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕
慶應義塾大 学名誉教授。