日立製作所はグローバル市場での成長を目指し、コスト競争力を強化する「Hitachi Smart Transformation Project」を推し進めている。2015年度の売上高に対するコストの比率を2011年度比で5%削減する目標だ。このために同社はグループを挙げて、乾坤一擲の大変革に挑む。その実務上のトップ、同社執行役専務の江幡誠氏がその要諦を語った。

写真:栗原克巳

 「Hitachi Smart Transformation Project」は、中西宏明社長自らの提案による、聖域のないコスト構造改革です。「技術の日立」といわれた当社にはこれまで、「品質も性能もいい物を造っているのだから、コストはある程度高くても仕方がない」という空気がありました。これに対し社長が「いい物を高く造るのは技術ではない。いい物を価格競争力を持って造るのが真の技術だ」と説き、コスト構造改革の旗を上げたのです。背景にあるのは、グローバル化です。

 ご存じのように、当社はここ数年でビジネスポートフォリオの見直しを進めてきました。液晶やプラズマパネル、ハードディスク・ドライブ、パソコンといった主にコンシューマ系のビジネスから撤退し、中西が言う「ソーシャルイノベーションビジネス」、すなわち情報系やインフラ系のビジネスに軸足を置き替えました。この結果、2008年にいったん大きな赤字を出したものの、その後は健康体といえる経営に戻りました。

 とはいえ、残したのは日本を中心に展開してきた事業が中心。従来のように日本市場だけを攻めていたのでは大きな成長は見込めません。そこで、次のステップとしてグローバル展開を不可欠と考え、Hitachi Smart Transformation Projectを通して世界で戦える強靭な体に鍛え上げようとしているのです。
〔以下、日経ものづくり2013年1月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

江幡 誠(えばた・まこと)
日立製作所 執行役専務
1947年2月生まれ。1970年早稲田大学を卒業し、同年4月日立製作所入社。資材調達や経営企画分野などを担当し、2003年6月同社執行役、2004年4月同社執行役常務。2008年3月に同社執行役常務を退任し、同年4月に日立ヨーロッパ社副会長に。2009年7月日立製作所執行役常務、2011年4月同社執行役専務に就任し、現在に至る。