プランナーの視点
アクアビット 代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー 田中 栄氏
1993年から2002年までマイクロソフトに在籍。WordおよびOfficeのマーケティング戦略を担当。その後ビジネスプランナーとして日本法人の事業計画立案を統括。2003年アクアビットを設立。「未来予測レポート」シリーズ著者。

 現在、世界の新車販売台数は年間約7000万台である。私はこれが2025年には現在の3倍近い約2億台になり、そのうち3割は電気自動車(EV)もしくはシリーズハイブリッド車(HEV)になると予想している。
 「3割」というのは世界全体の平均であり、世界のすべての地域で、平均的に3割がEVになるということではない。例えば国内で石油が豊富に採れるロシアでEVが普及するとは考えにくい。同様に、広大な農地があるブラジルは、バイオエタノール車で持続可能な形が既にできている。わざわざEVにする必要はない。
 一方、10億人以上の人口を抱える中国やインドにはEVに変える必然性がある。環境対策のためではなく、「エネルギ安全保障」の観点からだ。
 自動車の普及率でみれば、100人あたり約80台の米国、70台前後の日本や英国、フランス、ドイツに対して、中国はまだ5台前後、インドは2台にも満たない。だが中国は、既に米国に次ぐ世界第2位の石油輸入大国であり、インドの石油自給率も30%台でしかない。
 石油は自動車だけに使われている訳ではないが、「モータリゼーション」が石油消費に大きな影響を与えるのは言うまでもない。そのため中国もインドも、国を挙げてEVを推進している。

以下、『日経Automotive Technology』2013年1月号に掲載