なぜ若者がクルマを買わなくなったのか。多くの大人が持論を語るが、実際に多くの若者から意見を聞く大人は少ない。博報堂若者生活研究室の原田曜平氏は、日本だけではなくアジア各国を飛び回り多くの若者と接してきた。クルマの企画に携わったこともある。同氏に、クルマと今の若者の関係を聞いた。(聞き手は清水直茂)

博報堂 若者生活研究室 アナリスト 原田曜平氏
博報堂 若者生活研究室 アナリスト 原田曜平氏

 今の日本の若者の特徴は、見栄を張らず、身の丈に合った生活を選ぶこと。一昔前はクルマに憧れを抱き、例えば学生にも関わらず高価なスポーツカーを買う若者がいた。しかし身の丈世代の若者たちの周りには、生まれたときからクルマがあふれていた。憧れようがない。それに、クルマが生活に必要な若者はしっかり買っている。
 なぜ身の丈で振る舞うのか。携帯電話機やスマートフォンの普及に伴うSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の存在がある。「mixi」や「Facebook」、「LINE」などだ。子供のころからずっと、SNSを通じて友達との人間関係が続く。逆に言えば、子供のころから続く人間関係を切りにくい。
 一昔前の若者は中学校時代に失敗した経験があっても、大人になれば失敗を知る人間が周りにいないので、“新しい自分”としてやり直せた。今の若者にはそれが難しい。大人になり見栄を張ってみても、中学校時代からSNSを通じて関係が続く友達にばれる。見栄を張る意味がないので、無理をせずに自然体が一番、となる。

以下、『日経Automotive Technology』2013年1月号に掲載