自社が保有する技術資産を棚卸しすれば、顧客の求める製品/サービスを効率的に市場に届けることができます。「徹底!保有技術の棚卸し」では、自社の保有技術をいかに見える化し、戦略的に技術ポートフォリオに落とし込んでいくかを解説していきます。

R&Dマネジメントは市場主導で

 前回(2012年10月号)は、「市場の目」を起点に自社の保有技術を棚卸しすることの重要性について取り上げた。市場の目とは、「顧客価値」と「競合優位性」の視点を持つこと。これらの視点で自社の保有技術を棚卸しする手段として、技術一つひとつに対して顧客価値と競合優位性を評価して表にする「技術-市場マップ」を紹介した。

 言うまでもないが、どんなに優れた技術を保有していても、それを製品やサービスに昇華させなければ意味がない。今回は、技術-市場マップで見える化した技術資産を、市場で価値ある製品/サービスに仕立て上げるためには、どのような研究開発(R&D)ポートフォリオを作成すればよいかについて説明する。

 R&Dポートフォリオを作成・管理する手段として一般的に採用されているのは、「ROI(Return on Investment、投資収益率)」を基軸とする方法だ。しかし、これには幾つかの欠点がある。ここからは、まずROIを用いる手法の概要を示し、その欠点と、欠点を解消するために筆者が薦めるポートフォリオ作成・管理手法について順に解説していく。

〔以下、日経ものづくり2012年11月号に掲載〕

井上潤吾(いのうえ・じゅんご)
ボストン コンサルティング グループ
ボストン コンサルティング グループ(BCG)シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。東京大学工学部を卒業し、同大学工学系研究科修了。米ペンシルベニア大学経営学修士(MBA)。日本電信電話、BCGアムステルダムオフィスを経て現職。専門分野はハイテク、通信、金融、電力、新規事業、提携、研究開発、ポートフォリオ・マネジメント、営業改革、IT戦略。著書に『守りつつ攻める企業』(東洋経済新報社)など。