2012年9月18~23日にドイツ・ケルンで開催されたカメラ関連の展示会として世界最大規模を誇る「photokina 2012」。来場者数は166カ国から18万5000人を数えた。各社が披露した新製品から、今後のデジタル・カメラの進化の方向性が見えてきた。ポイントはスマートフォンとどう向き合うか。最新の動向を紹介する。

高級コンパクト機が続々

 「スマートフォンにここまで早く市場を食い荒らされるとは思ってもみなかった」──。

 あるカメラ・メーカーの幹部は、正直な胸の内を吐露する。別のメーカーの幹部も、「特に、低価格のコンパクト型デジタル・カメラ(コンパクト機)がスマートフォンに市場を奪われている」と語る。こうした言葉が象徴するように、デジタル・カメラ業界は今、猛烈な勢いで普及が進むスマートフォンの影響をもろに受ける形になっている。

 2年に1度開催される「photokina」は今回、スマートフォン旋風の真っ直中で初めて迎えるカメラの祭典といえる。「photokina 2012」は例年に比べて披露された新製品の数は多く“豊作”となったが、それらの多くがスマートフォンからの何らかの影響を受けていた。

スマホの影響は“陰と陽”

 スマートフォンの爆発的な普及は、デジタル・カメラにとって“陰と陽”の両面で影響を与えている。まず、陰の影響に関しては先述の通り、写真撮影の機能だけしか備えない低価格機の販売台数を激減させた。秒進分歩で向上が進むスマートフォンのカメラ機能は、既に低価格なデジタル・カメラの尻尾を捕まえた。実際、若者を中心に「スマホで十分」と考えるユーザーは少なくない。

 このように、陰の部分が目立つ一方で、写真に親しむ人が急増しているという陽の効果にカメラ・メーカーは期待を寄せる。例えば、ソニーでデジタル・カメラ事業を担当する勝本徹氏(同社 デジタルイメージング事業本部 副本部長)は「スマートフォンの登場で写真や動画を撮る人が飛躍的に増えた。今はスマートフォンで満足しているが、最終的には高画質をデジタル・カメラに求めるようになる」と分析する。

『日経エレクトロニクス』2012年10月15日号より一部掲載

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