東京都町田市の小高い丘の上にあるビニールハウス。一見、何の変哲もないビニールハウスだが、その中ではメロンの水耕栽培が行われている(図)。その名も「まちだシルクメロン」。メロンの水耕栽培自体が全国的に珍しいが、1株当たり60個も収穫できることも他に類を見ない。

 そして何より、このメロン栽培プロジェクトを推進しているのが、同市の中小製造業であることが注目される。医療機器メーカーやコンピュータソフト会社などが、栽培システムの開発から取り組んだ。水耕栽培において液肥を循環させる仕組みや濃度を調整する制御ソフトの開発とともに、最適な栽培条件を見極めていく試行錯誤の進め方でも、ものづくりの知見が大いに役立った。

 町田市でメロンの水耕栽培に取り組みだしたのは約3 年前。「製造業が厳しくなる中で、今後のものづくりはどうなるかを考えた」(町田商工会議所企画支援部部長の井之上正司氏)。重要視したのが、企業の企画開発力。これを高めるために目を付けたのが農業分野、特に水耕栽培だった。

〔以下、日経ものづくり2012年10月号に掲載〕

図●町田市の中小製造業が栽培する「まちだシルクメロン」
図●町田市の中小製造業が栽培する「まちだシルクメロン」
メロンの栽培では、1株から数個を収穫するのが一般的だが、まちだシルクメロンでは1株当たり60個収穫できる。1玉の重さも4kg以上と大きい。