組織で孤軍奮闘する勇気を共有

 一人屋台設計とは、製品設計から量産準備に至るまでの工程を1人の技術者が担当すること。深井製作所の須永行氏は講義の中で、自動車の燃料タンク下に配置する遮熱板を1人で、しかもたった40時間(実質的な設計と解析にかけた時間)で設計した実例などを紹介した。これに対する会場の興味は意外にも、一人屋台設計の手法や効果とは全く別のところにあった。

 「私も挑戦しようとしたが、上司に反対されて実現できなかった。その辺の苦労はなかったのか」「生産技術の担当者から反感を買ったのではないか。どう説得したか教えてほしい」。講義中に受講者たちから寄せられた質問は、こうした「実現までの苦悩」に集中した。実は多くの受講者が、一人屋台設計に挑戦した経験があったのである。須永氏は「私たちのお客様はエンドユーザー。一人屋台設計を実践することがエンドユーザーのメリットになるのであれば、上司や同僚に反対されても実現に向けて努力すべきだと思う」と回答。同氏は講義終了後も会場に残り、複数の受講者と組織の常識を打ち破ることの難しさについて議論した。

 会場には一人屋台設計で製品化した部品の展示もあり、休憩中に須永氏が、受講者の個別の質問に応じる場面も見られた。