質疑応答1時間

 「ステンレス鋼SUS304をエンドミルで削る時の切削速度(周速度)はどのくらいにしたらいいですか?」「400~600m/分で速めにする方がいいです。刃先に熱がこもりそうな気がしてスピードを落としちゃう例が多いんですが、逆です。速くして、熱は切粉に持っていってもらえるようにした方がいいんです」。

 「ではS45Cは?」「S45Cは、あまり速くするのはやめた方がいいです。せいぜい200~300m/分くらい。粘りっこい材料ですからね」。

 講師の松岡甫篁氏は、最近は超硬合金やガラスといったセラミックス、サファイアなどの難削材で、かつ医療分野向けにマイクロ流路を有する微小な製品などを切削加工する案件に取り組むことが多いという。ただしそのような高度な切削加工も、基礎理論は同じ。講演を聞いた参加者からは、基礎理論を具体的案件に適用する上でのヒントを求める質問が多く出た。

 その質問の一つひとつに、1呼吸おいてから的確に、定量的に答える松岡講師。現場の実例を多く経験し、かつ数多くの実験を通して確立した理論に裏打ちされたものといえる。基本の学習と同時に、切削加工の実務に即した情報も得られるセミナーだった。