民生機器で普及しているEthernetを、自動車分野でも広く利用する動きが始まっている。2008年ごろから自己故障診断用に用いられていたが、2013年以降、周辺監視用のカメラ・システムや運転支援システム、映像伝送の用途にまで広がりそうだ。将来的には、車載ネットワークのバックボーンにも利用される可能性が出てきた。民生機器のネットワーク技術の導入により、クルマの世界の“オープン化”が加速しそうだ。

Ethernetに普及の兆し

 自動車内のECUや電装品同士を接続するネットワーク、いわゆる車載LAN規格に「Ethernet」を利用しようと、自動車業界が舵を切り始めた。Ethernetは、既に2008年ごろから自己故障診断(OBD)用途で実用化が始まっている。今後は、リアルタイム性の向上やフェイルセーフの確保、コスト削減、データ伝送速度の向上などを実現しながら、適用範囲をさらに拡大していく。

 具体的には、2013年に発売予定の新型車の周辺監視カメラ・システムで利用するのを契機に、2014年には車載AV機器の映像伝送(情報)系でもEthernetを用いるもようだ。

 2015年以降は、ボディ系や制御系、安全系、情報系といった各系統をまとめるゲート・ウエイ同士を接続するバックボーン・ネットワークにまで、適用範囲を広げる可能性がある。制御系に関しても、「一部の用途での利用も検討している」(トヨタ自動車)という。

2億7000万ポートに

 車載Ethernetは、他の既存車載LAN規格と並存しながら普及していくだろう。例えば、情報系は「CAN」や「MOST」と、安全系ではCANや「FlexRay」と共に利用されていくようだ。制御系に関しても、ブレーキや姿勢制御といった、極めて高いリアルタイム性や信頼性を求める用途はFlexRayやCANを用いることになる。

『日経エレクトロニクス』2012年8月6日号より一部掲載

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