クルマの電動化・電子化に対応するには、企業の意思決定や開発のスピード、調達の方式を大きく変える必要があると野村総合研究所の風間智英氏は語る。そこには、自動車産業を電機産業の二の舞にしてはならないとの危機感がにじむ。(聞き手は鶴原吉郎)

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 自動車・ハイテク産業 コンサルティング部 グループマネージャー 風間智英氏
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 自動車・ハイテク産業 コンサルティング部 グループマネージャー 風間智英氏

 「日経ビジネス」2012年6月4日号で、日産自動車社長のCarlos Ghosn氏は「クルマはコモディティ化しない」と語っている。しかしクルマの電動化・電子化が進んでいけば、コモディティ化は進むと見るのが自然だ。
 ここでいう「コモディティ化」とは、特定の完成車メーカー(あるいは車種)向けに開発された部品でクルマを製造していたこれまでのやり方から、汎用的な部品で製造する方向へと変わっていくことを指す。オーダーメードの部品から、レディメードの部品への流れと言い換えてもいい。
 電機業界では、特定の製品向けに開発された部品で構成することはまれで、通常、汎用部品が構成部品の大部分を占める。汎用部品は、量産規模が大きいので改良が急速に進み、コストも低い。製品に競争力を持たせようと思ったら、汎用部品を使うしかない。
 自動車分野でも汎用部品が使われていなかったわけではない。しかしエンジンや変速機など、競争力を左右する部品は自社開発・自社生産するのが当たり前だった。クルマの電動化・電子化はこの常識を変える可能性がある。

以下、『日経Automotive Technology』2012年9月号に掲載