次世代型の電力貯蔵システムとして期待されるナトリウム・硫黄(NaS)電池。そのNaS電池の将来を揺るがしかねない火災事故が発生した。鎮火までに要した期間は、約2週間。性能には優れるものの、安全技術の未熟さを露呈した格好となった。

 2011年9月21日の午前7時20分頃、三菱マテリアルの筑波製作所(茨城県常総市)に設置されていた日本ガイシ製NaS電池が発火した(図)。NaS電池では電極にNaを使っており、水を掛けると爆発する恐れがあるので、消火活動が通常よりも難しい。砂を掛けるなどの消火活動により、同日の午後3時55分頃に火の勢いは弱まったが、その後も火災は小康状態のまま続き、同年10月5日の午後3時25分にようやく鎮火した。

 日本ガイシは事故発生当日に社内に事故調査委員会を設置したものの、鎮火までに時間を要したこともあり、直ちに事故原因を特定するのは難しかった。結局、事故発生から約1カ月後に、事故原因の究明が終わるまでの使用停止をNaS電池の顧客に要請するとともに、NaS電池の生産をいったん停止することを明らかにした。同社が事故原因と再発防止策を発表できたのは、2012年6月7日のことである。

〔以下,日経ものづくり2012年8月号に掲載〕

図●NaS電池
図●NaS電池
火災事故が起きたNaS電池と同型のもの。写真:日本ガイシ