2012年6月3~8日、ディスプレイ関連で世界最大の国際学会「SID 2012」が開催された。50回目を迎えた今回のSIDでは、有機ELに各社が注力する姿勢が明確になった。量産を目前に控えたテレビやスマートフォン用パネルの実現技術が発表された他、液晶では実現が難しいとされるフレキシブル技術でも進展がみられた。追われる立場となる液晶は、高精細化を加速し有機ELへの対抗策を進めていく。

有機ELが液晶に挑む

 「有機ELの技術開発競争で、他社に後れを取っていない。投資をすれば量産可能な段階にある」──。

 2012年6月1日に都内で開催された記者会見。シャープは半導体エネルギー研究所(SEL)と共同で、スマートフォンやタブレット端末向けの中小型有機ELパネルの試作品を披露した。画質の高さや薄型にできることなどから、次世代ディスプレイの本命と目される有機ELパネルを、シャープが公開するのは実に7年ぶり。同社で副社長執行役員(技術担当 兼 オンリーワン商品・デザイン本部長)を務める水嶋繁光氏は、自社の有機EL技術への自信を、冒頭の言葉で表現した。

 “液晶のシャープ”を標榜する同社にとって、“液晶の次も液晶”と言いたいのが本音だろう。会見の本題は、同社が注力する酸化物半導体TFTの新技術。その技術がまず応用されるのは液晶であり、有機ELは将来の可能性を言及しただけにすぎない。

 それでも、会見で披露したシャープの有機ELパネルは大きな注目を集めた。その理由は、次世代ディスプレイの本命として、有機ELがいよいよ離陸の兆しを見せつつあるからだ。これまで韓国Samsung Mobile Display(SMD)社がアクティブ・マトリクス型の有機EL市場をほぼ独占してきたが、この状況が変わりつつある。

『日経エレクトロニクス』2012年7月9日号より一部掲載

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