ムダとりコンサルタントの山田日登志氏は2012年4月某日、兵庫県西宮市に本社を置く菓子メーカー、アッシュ・セー・クレアシオン(HCC)の工場を訪れた。最初に足を踏み入れたのは、手作業で生ケーキのデコレーションをする「仕上げ工程」だ。冒頭から、怒涛のごとくムダを指摘する山田氏。そのわずか8分間の中に、山田流カイゼンに欠かせない3つの視点が凝縮されていた。

 山田氏は1971年からトヨタ自動車元副社長の大野耐一氏に師事し、1978年にPEC産業教育センターを設立した。以来、トヨタ生産方式を270社以上の企業に導入してきた。そんな山田氏が読者に向けてカイゼンのコツを伝授する連載「これがムダなんや」は、2010年4月~2011年10月号に掲載し、読者から大きな反響を呼んだ。本稿は、同連載の「特別編」である。

 本稿で取り上げるのは、連載でカバーしきれなかった「マクロな視点」だ。前述の3つの視点を「虫の目」とするなら、マクロな視点は「鳥の目」。活動全体を俯瞰して、虫の目で見つけた利益の種を、会社全体の利益として実を結ばせるための目である。

 次ページから、2011年度の決算で見事なV字回復を果たしたHCCの「復活の軌跡」を取り上げる。

〔以下、日経ものづくり2012年7月号に掲載〕