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「1人完結セル生産」を実現するためには、「記憶力」という人間の弱みを補うことが不可欠だ。そのカギとなる「デジタルマニュアル」(図)について今回は話を進めよう。
試作品の前にマニュアル作成
前回(2012 年5月号)の最後に記したように、ローランド ディー.ジー.(以下、ローランドDG)在籍中に筆者は紙で印刷していた組立マニュアルをデジタルデータ化し、ディスプレイなどに表示するデジタルマニュアルの活用を考えた。そのアイデアを当時の開発担当の取締役に話すと、1つの条件を課せられた。それは、「デジタルカメラの使用禁止」である。
当時、マニュアルは製品設計がほぼ完了してから作る最終段階の試作品をベースに作成していた。時間があれば、分かりやすいテクニカルイラストを新規に描き、それをマニュアルに貼り付けたい。しかし、製品設計が完了してからマニュアルが必要になるまでに許される時間は短い。作成期間を短縮するためにデジタルカメラで試作品を撮影し、その画像を表計算ソフトのファイルに貼り付けるといった方法となってしまっていた。
紙マニュアルの用紙はA3判で、それを横向きに使う。左半分に作業内容や使用部品、注意ポイントを文字(テキスト)で書き、右半分に画像を貼り付けるという形式だ。しかも、カラー印刷はコストが高いので、どうしてもモノクロ印刷になる。このため、以前のマニュアル上のデジタルカメラ画像は、決して見やすいとはいえなかった。
単に「画像を見やすいものにする」ということを意図したのであれば、カラーで紙に印刷したり、ディスプレイに表示したりすれば済む。後者はまさに、デジタルマニュアルとすることで実現できる解決策だ。
〔以下、日経ものづくり2012年6月号に掲載〕
関ものづくり研究所 代表