ハイブリッド車や電気自動車に欠かせない電源回路は二つある。一つは、前回に解説したDC-DCコンバータ。もう一つが今回取り上げるインバータである。DC-DCコンバータに比べて回路構成が複雑なインバータ。その回路動作などを解説する。

 直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換するDC-ACコンバータ。通常は、「インバータ」という名で知られている。これは電源回路の一種で、モータなどを駆動する回路/装置として広く普及している。
 応用分野は幅広い。産業分野では、電車や産業用ロボット、工作機械、エレベータ、ポンプ、ファン、無停電電源装置(UPS)、レーダなどがある。身近な電子機器にも採用されている。例えば、エアコンや冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、電磁調理器などの白物家電だ。エアコンではコンプレッサ用モータの駆動、洗濯機では洗濯槽を回すモータの駆動、電子レンジではマグネトロンの駆動に使われている。
 なぜインバータが使われるのか。その理由は、エネルギ効率を高められることである。インバータを使えば、出力する交流電力の周波数をきめ細かく制御できる。従って、必要なときに必要な回転数でモータを駆動できるわけだ。オンとオフだけで制御する従来方式に比べると、余分なエネルギを消費せずに済む。つまり、エネルギ効率を高められるわけだ。

以下、『日経Automotive Technology』2012年7月号に掲載