スマートフォンの薄型化と表示の高性能化、低コスト化の実現に向けた、二つの新しいタッチ・パネル技術がいよいよ離陸する。「インセル型」と「カバー・ガラス一体型」だ。これらの技術の普及は、タッチ・パネル業界の勢力図を大きく変えるインパクトを持つ。

二つの新技術が離陸

 IPS、低温多結晶Si TFTに続く、中小型液晶パネルの高性能化に向けた新技術が、2012年に本格的に離陸する。スマートフォンやタブレット端末の普及で一般化した、外付けのタッチ・パネルを不要にする「インセル型タッチ・パネル」(以下、インセル型)と「カバー・ガラス一体型タッチ・パネル」(以下、カバー・ガラス一体型)だ。

 インセル型は、これまで外付けだったタッチ・パネルの機能を液晶パネルに内蔵するもの。一方、カバー・ガラス一体型は、スマートフォンやタブレット端末の筐体表面を覆うカバー・ガラスに、静電容量型タッチ・センサの電極を形成するものだ。二つの技術は、スマートフォンなどの性能を向上させるだけでなく、タッチ・パネル業界の勢力図を塗り替えそうだ。

ジャパンディスプレイが先行

 インセル型で先陣を切るのは、2012年4月1日にソニーと東芝、日立制作所の中小型パネル事業を統合して発足したジャパンディスプレイ。統合前となる2012年1月に、旧ソニーモバイルディスプレイがスマートフォン用パネルの量産を開始した。導入したのは、ソニーが開発した、多点検出が可能な静電容量型タッチ・パネルの機能を液晶パネルに内蔵する技術である。同社はこれを、「Pixel Eyes」(ピクセルアイズ)と呼ぶ。

 ジャパンディスプレイは、インセル型を中小型液晶パネル市場でトップシェアを堅持するためのコア技術の一つに掲げる。「Pixel Eyesをベースにして、インセル型の普及拡大を進めていく」(同社 執行役員 CTO 研究開発本部 ディビジョンマネジャーの田窪米治氏)という。ジャパンディスプレイと競合するシャープや韓国LG Display社といった大手液晶パネル・メーカー各社も、インセル型の量産に向けた開発を加速させている状況だ。

『日経エレクトロニクス』2012年5月14日号より一部掲載

5月14日号を1部買う