世界的なテレビ不況が、国内電機メーカー3社の屋台骨を揺るがしている。シャープ、ソニー、パナソニックは2011年度に過去最大規模の赤字を計上する。3社の最終赤字額の合計は2兆円近くに達する見通しだ。経営の建て直しに向けて、シャープは台湾Hon Haiグループとの資本提携に踏み切った。ソニーとパナソニックも経営体制を刷新し、事業再建を急ぐ。各社が掲げてきた“キー・デバイス戦略”はここにきて、終焉を迎えた。過去の成功体験を捨て去り、今こそ事業モデルを大胆に転換できるか。

終焉を迎えた国内電機メーカーの“キー・デバイス戦略”

 テレビ不況が国内電機メーカーに与えた打撃の大きさを知らしめたのが、生き残りを賭けてシャープが下した決断だ。2012年3月末、EMS最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業)を中核とするHon Haiグループと資本提携し、9.88%の出資を受けると発表した。Hon Haiグループはシャープの筆頭株主になる。

 業界関係者を驚かせたのは、“液晶のシャープ”を象徴する堺の大型液晶パネル工場の共同運営という提携のスキームだ。同工場の運営子会社の株式のうち、シャープ保有分の半数をHon Hai社が買い取り、生産するパネルの50%を引き取る。

パネルへの投資を相次ぎ凍結

 シャープの決断は、国内電機業界が迎えた大きな転換点を象徴している。自社の機器部門の要求に応える形で高品質の中核部品を開発・製造し、他社に作れない機器を生み出すことを狙った“キー・デバイス戦略”が終焉を迎えたことである。

 この戦略は、対象機器の市場が成長段階にある際には大きな果実をもたらす。中核部品を内製することで、先行者利益をフルに享受できる。しかし、市場規模がある程度大きくなり、後続メーカーが追い付いてくると、中核部品を自ら手掛ける効果が薄れ始める。デジタル機器では技術の成熟速度が速いため、予想以上のペースで後続メーカーがキャッチアップしてくる。そして、競争が激化し、市場が飽和すると、中核部品を自ら開発・製造することは逆にデメリットになる。部品の内製や囲い込みが足かせになり、市場から最も安価な部品を調達しにくくなるからだ。

『日経エレクトロニクス』2012年4月30日号より一部掲載

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