「実践 日野式設計手順書」では、日野三十四氏が提唱したモジュラーデザイン(MD)を実現する上で最大のカギとなる設計手順書について、その作り方や運用方法を指南します。メカ/エレキ/ソフトから成る複雑なシステムを論理的に設計するための方法を学べます。

戦略的ラインアップで多様な製品を実現

 今回は、構想設計の手順書について説明する。その前に製品開発プロセスにおける構想設計の位置付けを確認しておく(図)。

 製品開発プロセスの最上流は製品企画であり、エンドユーザーの製品に対する漠然とした市場要求(VOC:Voice of the Customer)を基に総合製品企画で製品ラインアップを、個別製品企画で個別製品の具体的な製品仕様を決定する。その次に来るのが構想設計である。構想設計では「システム設計」「品ぞろえ設計」「設計部品構成決定」の3つを行う。

 システム設計では、製品仕様を実現する製品システム(製品の方式)の具体的な機能ブロック図、レイアウト図、配管・配線図を決定する。品ぞろえ設計では、具体化した製品システムを基にどのような派生品(バリエーション)を用意するかを検討する。設計部品構成決定では、派生品を含む全ての設計部品の構成を決定する。

 設計部品構成を確定した時点で、各部品について内製するか外注するかを検討し、外注する可能性がある部品についてはサプライヤーに仕様(引合仕様)を提示する。サプライヤーは、その部品(サプライヤーにとっては製品)の詳細仕様を決め、システム設計および下位の設計部品構成決定を実施し、さらに価格と納期を決めた上で最終製品メーカーに対して見積仕様を回答する。

〔以下、日経ものづくり2012年5月号に掲載〕

図●製品開発プロセスおよび用語の定義
図●製品開発プロセスおよび用語の定義
本稿では、製品開発プロセスおよび用語をこう定義する。今回のテーマである構想設計は「、システム設計」「品ぞろえ設計」「設計部品構成決定」の3つから成る。最終製品メーカーとサプライヤーでそれぞれ構想設計を行うが、サプライヤーの構想設計は「見積設計」として区別する。

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 代表
1968年東北大学工学部卒業、マツダに入社し、エンジンの研究に従事。1988年に技術管理部門に転籍し、技術の標準化や開発プロセスのシステム化などを推進した。2000年にコンサルタントとして独立。2008年に「モノづくり経営研究所イマジン」を開設。2011年に「日本モジュラーデザイン研究会」を創設し、会長に就任。著書に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)、『実践 モジュラーデザイン 改訂版』(日経BP社)など。