2012年2~3月号では、2011年10月に日本プラントメンテナンス協会が主催した「からくり改善くふう展」の展示品から、生産現場で発生するさまざまな問題を解決しようと現場のアイデアで作製された、選りすぐりのからくりや治具を紹介します。次号からは、「デジタル屋台」の連載を始めます。

力作業からの解放

 前回(2012年2月号)から、工場の作業者が今抱えている問題、すなわち「現場の困った」に着眼し、その解決に成功したからくりや治具の事例を紹介している。今回、焦点を当てるのは、物の運搬にかかわる「困った」を解決する事例だ。物の運搬は、製品を造る上で必要ではあるものの、それ自体は価値を生まない。これを楽にすることで、作業者の負担を減らしつつ、時間をより価値ある仕事に振り向けることができる。

台車が重くて初動に一苦労

 まず取り上げるのは、トヨタ車体の事例だ。同社の工場では大物の車体部品を扱うことが多いため、積載質量の大きな台車を押す作業が作業者の負担となっていた。特に苦労していたのが、止まっている台車を動かす「初動」の時だ。非力な女性作業者の場合は地面に足を踏ん張りつつ前方に体重を乗せないと、台車はビクともしないのが実状だった(下の図)。これを楽にしようと考案されたのが、台車初動アシスト装置「楽々ペリカン君」だ(下の写真)。

〔以下、日経ものづくり2012年3月号に掲載〕

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