東北を代表する企業、アイリスオーヤマ。新商品は、出せばヒットする。東日本大震災の時には、一刻も早く商品を届けるのが使命と、早々に復旧を遂げた。それもこれも社長の大山健太郎氏のものづくり哲学によるところが大きい。それを理解するキーワードはずばり「メーカーベンダー」だ。

写真:阿部勝弥

 アイリスオーヤマは、日本全国に8工場7拠点を持っています。なぜ、製造拠点を集約せずに分散させているかというと、我々はメーカーでありベンダーでもあるからです。通常、生活用品を扱うメーカーさんは中間流通に納入するために、1カ所で大量生産します。しかし、メーカーベンダーの当社の場合には中間流通が自前なので、全国に物流センターを置いています。物流コストを考えれば、物流センターの中に製造部門を置くのが最も合理的。今日注文いただいた商品を明日届けるためには物流拠点は全国に必要になりますから、工場も全国に分散しているというわけです。

 ものづくりの観点からいえば、製造拠点を集約した方が効率的と思われるでしょう。しかし、現在の体制はリスク分散になるため、結果として東日本大震災のときには宮城県内の工場が停止しても他の工場でその分を補うことができました。今すぐにマスクやカイロなどの生活用品を欲しいという被災者の皆さんに対し、それを供給するメーカーとしての責務を果たせたと考えています。
〔以下、日経ものづくり2012年3月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

大山 健太郎(おおやま・けんたろう)
アイリスオーヤマ 代表取締役 社長
1945年大阪府生まれ。1964年前身の大山ブロー工業所の代表に就任。1971年株式会社に改組し、社長に就任。メーカー直販体制を確立後、1989年本社を仙台市に移し、園芸、ペット、収納用品などの市場を創造しながら、メーカーベンダーとして急成長する。1991年現社名に変更。仙台経済同友会代表幹事、東北ニュービジネス協議会会長などを務める。