駅や商業施設内など、屋内で位置情報を取得するための屋内測位技術への注目度が高まっている。キッカケは、Google社やヤフーが、同技術を活用した屋内地図サービスを始めたこと。商業用途での利用を橋頭堡に、安全・安心や省エネ、災害対策などへと用途を広げそうだ。測位関連のベンチャー企業や機器メーカーは、屋内測位の精度をさらに高めようと、高精度化技術の開発を加速し始めた。

屋内地図サービスが始まる

 「ついに始まった。関連技術の検討を加速しなければならない」(国内メーカーのスマートフォン開発者)。「2012年は勝負の年になりそうだ」(ある大学の研究者)──。関係者が色めき立っているのは、2011年10~11月にかけて、米Google社やヤフーが相次いで日本国内で始めた屋内地図サービスに関してである。日本では地下鉄の駅やデパート、空港など100以上の屋内施設で、地図と現在地をスマートフォンの画面上に表示できるようになった。

 位置情報に関連したサービスは、もはや屋外では当たり前のように利用できる。今回はそれが屋内にも適用された形になる。ただし、その波及効果はケタ違いに大きい。屋外に比べて屋内は、人の集まる場所が多いからだ。これらの人々の位置に基づき、“ネット”から情報提供して“リアル”の店舗に集客する「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」と呼ぶ手法の切り札になると期待を集めている。

 屋内における位置情報の応用先は、商業用途だけにとどまらない。将来は、屋内外での子供や老人の見守り、オフィス内の人の場所に応じた空調管理、ビル内での避難誘導など、安全・安心、省エネ、災害対策といった幅広い分野で活用されるだろう。こうした広い市場に向けて、屋内で位置を測定(測位)するための技術開発が、機器メーカーや部品メーカーを中心に活発化し始めた。

無線LANとスマホで実現

 ここへ来て、屋内地図サービスが相次いで始まったのは、屋内測位技術を手軽に利用できるようになったからだ。屋内ではGPSによる測位が困難なため、屋内向けの新たな測位技術が欠かせない。候補となる技術は数多く提案されていたものの、導入コストを誰が負担するのかが、実用化の足かせとなっていた。

『日経エレクトロニクス』2012年2月20日号より一部掲載

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