武州工業は小型のハイドロフォーム装置を開発、部品の受注を始めた。今まで素管の径にして30mm以上、月産2万~3万台以上という寸法、量産規模の制約があったハイドロフォームを、身近なものにした。例えば直径16mm、厚さ1.2mmの管を素材にして成形できる。

 ハイドロフォームは自動車の生産に生かされ、すっかり定着した技術である。金属のパイプを金型で挟み、中に水を入れて圧力を上げ、金型に押し付けて成形する。
 今、自動車の生産現場で稼働しているハイドロフォーム装置は加圧力50MNから100MNという大きな油圧プレス機を元にした設備がほとんどである(図)。水の圧力は低くても100MPa。高いものでは700MPaというものもある。直径30mm以上のパイプを素材として車体の構造材など、太い中空部材を造るのに向いている。
 寸法だけでなく量産規模も大きい。今まで、最低でも月に2万~3万個を生産するワークでないとハイドロフォームは採用できなかった。これは装置費、金型費などの固定費が高いためである。
 特に小さな部品を今あるような大きなハイドロフォーム装置で造ろうとすると、多数個取りにするしかない。このためワークが小さくても金型費は安くならない。また、多数個取りでは、すぐに1ロットの生産が済んでしまうため、段取り替えの間隔が短くなり、ますますコストが下がらない。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載
図 通常のハイドロフォームの装置
写真はドイツOpel社の現場。巨大な設備である。