研究者の視点
カノラマジャパン 代表取締役 宮尾健氏
アルプス電気、CSM Worldwideを経て、2009年カノラマジャパンを設立。欧州・米国・中国各拠点のスタッフと共に、自動車産業におけるグローバルサプライチェーンをテーマとした市場調査、コンサルティングを手がける。

 2011年夏に、自動車産業のサプライチェーンに関する調査のためメキシコを訪問した。理由はもちろん、日本の自動車メーカーや部品メーカーが生産規模拡大計画を打ち出すなど、メキシコが注目を集めているからにほかならない。なぜ今日本の自動車業界がメキシコに注目しているのか。その理由をいま一度掘り下げてみたい。
 円高、ドル安、ユーロ安などの為替問題はもちろん重要な要素だが、メキシコに注目する理由はほかにある。
(1)NAFTA(北米自由貿易協定)や日本・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)など、メキシコ国内の自動車産業の成長に必要な各国との積極的な経済連携政策があること。
(2)国内の教育システムの充実により優秀なエンジニアの獲得が比較的容易で隣国の米国と比べて労務費が低いこと。
(3)米GM社、米Ford Motor社、米Chrysler社、ドイツVolkswagen社など世界の大手自動車メーカーが積み上げた長い歴史の中で、サプライチェーンが確立していること。
(4)リーマンショック後の米国政府の合理化政策に伴うメキシコへの直接投資の拡大と、それに伴うデトロイト3ならびに原材料メーカーを含めたサプライヤーの生産規模拡大―などが挙げられる。

以下、『日経Automotive Technology』2012年3月号に掲載