個別の要求に応じて都度設計するのではなく、あらゆる要求に対応可能な標準品を設計する─。グローバル化に伴い、こうした設計標準化の重要性が増している。標準化が急速に進む自動車シート骨格の事例から要点を探った。

 「最近、既に製品化されたシート骨格でそのまま新型車に使えるものはないかという打診を顧客の自動車メーカーから受けるようになった」。タチエス常務執行役員で開発部門長の三木浩之氏は、こう語る。

 この顧客は、新興国を中心に世界の市場に向けて新型車を投入する方針を打ち出している。だが、市場や車種ごとにシート骨格のような部品を開発していては、こうした計画に間に合わない。従って、市場や車種が異なっていても部品の単位では共用化したいのだ。

 そうした要望に応えるべく、タチエスはさまざまな車種への搭載を前提とした標準シート骨格「TTKFRAME」を開発した。この標準シート骨格の設計を基にして、異なるユニットや部品を組み合わせることにより、複数のラインアップを実現している。

 従来、自動車メーカーは車種ごとに最適な自動車部品を造り込む傾向にあった。しかし、市場のグローバル化によって競争が激化し、状況が劇的に変わったとタチエスの三木氏は指摘する。競争力を確保するため、自動車部品の種類数を抑えて同じ自動車部品を多くの車種で共用する設計標準化の重要性が高まっているのだ。

 シート骨格の標準化を進めているのは、同社だけではない。トヨタ自動車系のトヨタ紡織や、ホンダ系のテイ・エステックも同じく標準化に取り組んでいる。自動車メーカーの方針転換により、シートメーカーは標準化を進めやすくなった。

〔以下、日経ものづくり2012年2月号に掲載〕