最先端の半導体回路技術が集う国際会議「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2012」が2012年2月19~23日に米国サンフランシスコで開催される。景気の低迷を背景に、北米からの論文数が減少する中で、韓国や日本といったアジア勢の論文数が増えている。スマートフォンやタブレット端末に用いられる低電力SoCやメモリの領域などでアジア勢の存在感が高まっているからだ。

 今年で59回目を迎える半導体回路技術の国際会議「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2012」が2012年2月19~23日に米国サンフランシスコで開催される。ISSCCは最先端の半導体回路技術が集う国際会議として知られており、市場投入を目前に控えた最新の半導体チップが発表される場としても有名である。今回のISSCCを象徴するトピックといえるのが、ISSCC史上初めてアジアの採択論文数が北米を上回ったことだ。具体的には、アジアが73件(36%)と、北米の68件(34%)、欧州の61件(30%)を抑えて首位に立った。

 これまでISSCCでは伝統的に北米の採択論文数が多かったが、ここ数年は北米の論文採択率が低下傾向にあった。不況の影響などによって、大手メーカーによる質の高い論文が減り、北米の平均的な論文の質が徐々に低下しているからだ。例えば、ISSCC 2012の採択論文数を研究機関別に見ると、上位グループの中にISSCCの常連である米Broadcom社や米Texas Instruments(TI)社といった大手の名前が見られない。

 北米とは対照的に、近年論文の採択率を伸ばしているのが、韓国や日本、台湾といったアジア地域である。特に韓国KAISTは採択論文数で2年連続トップとなり、今年は米Intel社と並ぶ13件を発表する。韓国Samsung Electronics社をはじめとするSamsungグループも採択論文数を昨年の6件から今年は10件に増やした。日本勢も健闘しており、東芝や富士通グループ、ソニー、慶応義塾大学、東京大学などが3件以上の採択論文数を確保している。こうした研究機関の活躍によって、半導体回路技術はアジア勢が牽引する形になりつつある。

SoCとメモリはアジアの独壇場

 アジアが躍進する背景には、アジア勢が得意とする技術分野の重要性が相対的に高まっていることがある。現在、半導体の進化を牽引する電子機器はスマートフォンやタブレット端末などに移りつつある。こうした機器で重要となるのが、アプリケーション・プロセサなどの「マルチメディア・通信用SoC」と、DRAMやNANDフラッシュ・メモリに代表される「メモリ」である。マルチメディア・通信用SoCの分野では、全論文数7件に対して、アジア勢は6件と多い。またメモリでは「DRAMおよびPRAM」「不揮発性メモリ」の分野で全論文数16件のうち、14件をアジア勢が占めている。

『日経エレクトロニクス』2012年1月23日号より一部掲載

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