駆動用モータとして主流の永久磁石モータは、車速が100km/h以上の高速域と、50~60km/hの中速域で効率が低い。この課題を解決するため東洋大学教授の堺和人氏らは、従来は「不変」が前提だった永久磁石の磁力を外部からの磁場によって積極的に変え、全速度域で効率が高い「ハイブリッド可変磁力モータ」を提案する。(本誌)

 ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)のモータに、永久磁石リラクタンスモータ(PRM:Permanent magnet Reluctance Motor)を使うのが一般的になりつつある。米Ford Motor社がHEVで採用し、トヨタ自動車の「プリウス」も、そうは呼ばないがPRMと同じ原理のモータを使っている。
 PRMの特徴は、低速域と高速域で高い効率を出せること。PRMは優れた可変速モータといえるだろう。ただ、それでも課題が残っている。車速が50~60km/h程度の中間速域で軽い負荷のときや、車速が100km/hの高速域で効率が低いことである。
 そこで東洋大学の筆者や、筆者がかつて勤務していた東芝は現在、PRMを超える全速度域で効率が高い新しいモータ「可変磁力モータ(VMF:Variable Magnetic Force Motor)」の研究に取り組んでいる。これまでのモータ制御で「不変」を前提としていた永久磁石の磁力を積極的に変えることで、PRMを進化させようという考えのモータである(図)。現在は計算で性能を評価している段階だが、HEV/EV向けモータの実用上のエネルギ損失を10~20%程度減らせるとみている。

以下、『日経Automotive Technology』2012年1月号に掲載
図 原理を検証するための試作機の回転子
永久磁石の磁力を実際に変えられるのかを試すために造った。