グローバルセンスは、視野を世界へと広げるために必要なさまざまなテーマを、全ての技術者を対象にして紹介するコラムです。2011年10~12月号は、「新興国に最強工場をつくる」をお届けします。文字通り、新興国に最強工場をつくるための勘所を実践的に解説します。

 海外で生産する場合と日本で生産する場合で最も異なるのは、働く人と購入する部品・材料(以下、購入部品)である。前回(2011年11月号)は、働く人に注目してチームワークを高めるための方法を紹介した。今回は、まず購入する部品に着目し、品質向上のための方策を解説する。次いで連載のまとめとして、「7M+R&D(なな エム プラス アール アンドディー)アプローチ」を実際に工場に適用した事例を見ていく。

良品しか買わない、使わない

 購入部品に関して、筆者が長年かけてたどり着いたのは、「良いもの(良品)しか引き取らない」「良いもの(良品)しか使わない」という2つの鉄則である。皆さんも異論がないと思う。ただ、これを実現することはとても難しい。

 7M+R&Dアプローチでは、15番目の評価項目「品質管理能力」で、この2つの鉄則を実現する仕組みの有無を確認している(図)。具体的には、筆者が実際の工場運営で実績を上げてきた、「購入部品品質監査員制度」と「2分間チェック」である。

〔以下、日経ものづくり2011年12月号に掲載〕

図●7M+R&Dアプローチにおける不良品排除の仕組み(評価項目15「品質管理能力」)の評価方法
特に海外製の部品・材料を活用する際に、こうした不良品排除の仕組みが重要になる。

佐々木久臣(ささき・ひさおみ)
東京大学 特任研究員
1965年東北大学工学部を卒業後、いすゞ自動車に入社、主に生産技術を担当。海外事業室長などを経て、1990年英IBC Vehicles社社長兼CEO。1997年いすゞポーランド社社長兼CEO。2000年に帰国し、いすゞ自動車専務取締役(生産部門統括)に。退任後、2003年に旭テック社長兼CEOに就任。2005年退任。現在は東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員の他、アリックスパートナーズの顧問などを務める。