医療機器の低被曝化に向けた技術開発が熱を帯びてきた。東日本大震災を発端とする原発事故によって、被曝に対する患者の意識が急激に高まったことが背景にある。医療機器本来の性能と大幅な低被曝化を両立する技術が、続々と登場し始めた。

医療機器の低被曝化に注目集まる

 「わずか1カ月で、初年度の販売目標台数の約半分が売れました」──。

 オムロン ヘルスケアが開発し、オムロン コーリンが2011年8月末に販売を始めたばかりの内臓脂肪測定装置「HDS-2000」の売れ行きが好調だ。同装置は、これまでX線CT装置を使って調べる必要があった内臓脂肪の正確な蓄積量を、体組成計などで用いるインピーダンス法によって測定できるようにしたもの。つまり、放射線による被曝がなく測れるのが特徴である。

 オムロン コーリン 営業本部 営業戦略部 検診予防マーケティンググループ マネジャーの金家正氏は、次のように語る。「ある病院からは、『うちの施設では“県内で初めて被曝なく内臓脂肪を測定できる”とアピールしたいので、早く納入してほしい』と催促された」。

2011年、社会の意識が急変

 医療機器による被曝、いわゆる医療被曝に社会の大きな関心が集まっている。冒頭のエピソードは、それを端的に示す一例にすぎない。

 コニカミノルタエムジーが2011年4月に発売した超音波診断装置「SONIMAGE 613」についても同様だ。同装置は、骨や筋肉など体表から浅く広い部位の状態を観察・比較しやすくするため、横長の診断画面を上下に表示できるモードを搭載したのが特徴である。レントゲン撮影からの置き換えを図る整形外科に対して「極めて好調に売れている」(コニカミノルタヘルスケア 営業本部 マーケティング統括部 超音波営業部 部長代理の伊藤卓氏)という。

『日経エレクトロニクス』2011年11月14日号より一部掲載

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