Google社やIntel社、Microsoft社など、インターネットやパソコン業界の大手が非常に強い関心を示すキーワードがある。「TVホワイトスペース」がそれだ。地上デジタル・テレビ放送に割り当てられた周波数帯域を、他の無線サービスが利用できるように、条件付きで開放するコンセプトである。果たして、どのようなサービスを想定しているのか、また、真の狙いは何か──。米国動向を中心に、TVホワイトスペースの現状と今後の課題をまとめる。

Google社やIntel社などがFCCに働きかけ

 「TVホワイトスペースを活用することで、伝送距離が長く、速度が速く、そして接続の信頼性が高い『スーパーWi-Fi』を実現する」──。

 今、米国の通信業界やパソコン業界、スマートフォン関連業界において、一つのキーワードが大きな関心を集めている。「TVホワイトスペース」と呼ばれるものだ。地上デジタル・テレビ放送向けに割り当てられている周波数帯の空きチャネルを、無線LANなどの他の無線サービスが時限的に、免許不要で利用できるというコンセプトである。

 テレビ放送向けの周波数帯(数十M~700MHz帯)は電波が回り込みやすいため、伝送距離を稼げる。このような通信サービスに向いた周波数を仮に無線LANなどが利用できれば、同じ送信出力で数倍の伝送距離を確保できる。

 冒頭のコメントは、米国で周波数政策をつかさどる、米連邦通信委員会(FCC)の会長であるJulius Genachowski氏が語ったもの。2.4GHz帯や5GHz帯といった免許不要の帯域があることが無線LAN(Wi-Fi)の市場を拡大したという認識から、テレビ帯域を同様に免許不要として開放すれば、「スーパーWi-Fi」と呼べるような新サービスが登場するのではないか。そのような期待を込めた発言である。英市場調査会社のPerspective Associates社によれば、TVホワイトスペースを活用する無線ネットワーク事業は、米国だけで将来は585億~1095億米ドル規模の利益を生み出すとしている。

『日経エレクトロニクス』2011年10月31日号より一部掲載

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