試作段階の電子機器に強烈な温度変化と振動を加えて壊し、弱点を補強することで機器の信頼性を高める──。この「HALT」と呼ぶ試験技術が、日本でもようやく広がり始めた。これまでHALTに懐疑的だったメーカーもHALTの良さに気付き始め、全社展開に踏み出すところも出てきている。背景にあるのは、コストと時間がかかりすぎる日本流ものづくりへの危機感だ。

国内大手電機メーカーA社が実施したHALT評価

 「この結果には、正直驚いた。期待していた以上の効果だった」──。新しい試験技術「HALT(highly accelerated life test)」の実力を評価した国内大手電機メーカーA社の技術者は驚きを隠さない。

 A社はHALTの評価を2011年6月に実施した。試験対象には、大手ベンダーから購入した2種類のSSD「SSD-1」「SSD-2」を用いた。SSD-1は、A社が事前に実施した約1カ月間の温度サイクル試験でNANDフラッシュ・メモリのはんだ接続部に不具合が見つかった品種。SSD-2はSSD-1の改良品であり、1カ月間の温度サイクル試験に合格し、A社製のノート・パソコンに搭載された品種である。これらをHALT装置に入れ、急激な温度変化を加えることで、SSD-1の不具合を短時間で見抜けるか評価した。

 試験開始からわずか2時間、A社が予想もしなかったことが起きた。SSD-1だけではなく、改良品であるSSD-2にも不具合が確認されたのだ。しかも、壊れた箇所はNANDフラッシュ・メモリではなく、コントローラICだった。「当初、HALTでは試験条件が厳しすぎるため、正しい結果が出ないのではないかと思った」(A社の技術者)という。

 ところが調査の結果、SSD-2を搭載したA社製ノート・パソコンに市場不具合が報告されており、その内容が今回の試験で見つかった不具合と完全に一致することが判明した。「つまり、1カ月間の温度サイクル試験でも見抜けなかった市場不具合を、わずか2時間で再現できたことになる」(A社の技術者)。

『日経エレクトロニクス』2011年10月17日号より一部掲載

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