事例で理解しやすく

 「MT(Maharanobis Taguchi)システムの適用例の1つが、アルプス電気におけるマイクロスイッチの出荷検査だ。そのきっかけになったのが、マイクロスイッチで発生した糸くず混入不良」。新しい検査手法の1つであるMTシステムの解説中、講師の立林和夫氏が紹介した事例の1つである。

 アルプス電気はスイッチの作動力と復帰力に関し、所定のストロークのときに所定の荷重範囲に入るかどうかで良/ 不良を判定していた。だが、この方法では糸くず混入不良を把握できなかった。実は、同スイッチの場合、良品における荷重はストロークに応じて決まる、ある領域に収まる。しかし、この領域に入るからといって必ずしも良品とはいえなかったのだ。

 そこで、同社が目を付けたのが、良品では、あるストロークで荷重が大きめだったら別のストロークでも荷重は大きめになること。各ストロークにおける荷重の相関関係を考慮して良/不良を判断することだった。まさに、さまざまな特性の相関関係を考慮して、良品のパターンからのずれの大きさで良/ 不良を判断するMTシステムの概念そのものである。手法の本質を理解できるように、事例を交えて具体的に解説する、経験豊富な立林氏ならではの講義だった。